個性と共感~大阪大学FGLCでのインクルーシブ社会の探究~
高校1年生の水都生が、大阪大学大学院国際公共政策研究科が主催する高校生向け研究発表会「Future Global Leaders Camp(FGLC)」に参加しました。
今回のブログでは、FGLCでの経験を水都生が体験記としてまとめてくれたものをご紹介します。プログラムの内容や実際に取り組んだ課題、そして将来への展望について詳しく説明しています。
ぜひ最後までご覧ください。
最初にFGLCというのは、Future Global Leaders Campの略称であり、全国の⾼校⽣が将来リーダーシップを発揮しグローバルに活躍するために役⽴つ国際的な感覚を養うことや、課題研究・発表の⼿法を学ぶことを⽬的として3日間かけて内容の濃い学びと交流を⾏うプログラムです。
そんなFGLCに僕が参加した理由は大きく2つあります。1つ目は、自分自身を深く理解できる機会があると考えたからです。大阪大学にはSEEDSプログラムを始めとして高校生向けのプログラムが多くあります。その中でも、このFGLCは社会課題に対して日本中から集まる高校生同士が協力し解決策を講じるプログラムだと知りました。自分と違う意見やスキルの人と出会うことができれば自分の長短が分かり、これから様々な活動を行うときに自分の適正を理解できると考えました。もう1つの理由は、多様な人たちが集まっているという価値に興味を持ったからです。大阪大学の学祭に友達と行ったときに非常に楽しかった思い出がありました。そんな大阪大学の魅力あるプログラムであり学校以外の人たちと活動できるいい機会になるのではないかなと思い参加しました。プログラム中は、大学でどのようなテーマで研究していけばいいかなどを探り、好きな分野を見つけられたらいいなと意識していました。
今年のFGLCは4年ぶりに対⾯形式で開催されたみたいですが、今年のテーマは「インクルーシブ社会の実現」でした。まず、グループに分かれてアイディアを出し合い、最終日には、各グループがテーマに対して解決策を提示、それを大学の教授陣に評価してもらうという流れになっています。テーマが抽象的でざっくりしているので、それぞれのグループが違うトピックに焦点を異なる視点から解決策を提案していました。
まず、このプログラムに参加するに当たってテーマに対する自分の意見文とスライド制作をしなくてはならないのですが、正直なところ、インクルーシブ社会についてはまったく知りませんでした。実際、参加者がプログラムの初日に自分の調べてきたテーマを発表する時間では、他の参加者の人たちが自分よりも課題に対して綿密にサーチしていることや、どのように行動したら社会がいい方向に変わるのかなどを深く探究していることに驚きました。
自分の調べてきたテーマを発表した後、グループでのテーマを決めました。その際、メンバーそれぞれが意見を出し合うのですが、メンバー全員が自分なりの意見や個性を持っていて、朝から晩まで話し合いをして論を組み立てていきました。トライアンドエラーの繰り返しの状態でしたが、発表に向けて全員が同じ方向を突き進んでいたので飽きることなく最終発表まで取り組めました。水都では先生が生徒に一方的に教える授業ではなくて生徒同士で意見を交換しあう授業が多いのが特徴です。ただ、今回のように、初対面の仲間と長時間話すことができたことは、異なるバックグラウンドを持つ人たちと交流するチャンスでした。その結果、アイディアが深みを増し、自分だけでは思いつかなかった視点から物事を考えることができると感じました。
一方で、プログラムが非常に充実している分、長時間作業になってしまい集中力を維持することが難しかったです。僕たちのグループでは約1時間ごとに時間を決めてそれがキリの良いところまで進んだら他愛もない会話をしたりして何とか気持ちを紛らわせていました。また、中間発表で自分たちの論に対する大学教授からの厳しいダメ出しはとても辛い部分もありました。大学や企業でも同じだとは思いますが、今まで話し合ってきたことを数分という限られた時間で発表する能力が求められていました。このような「要約力」と呼ばれる短く分かりやすく話すことはこれまであまり経験してこなかったため苦戦しました。
学校での学びが生きた場面は、主にPCの扱い方です。プログラム中では、自分自身で課題を解決する方法を考えたり情報を収集したりするため、リサーチ力やそれらをまとめたスライドなどの作成力が求められます。水都では探究学習の機会がたくさんあったため、これらの能力が鍛えられていたかもしれません。実際にこれらの作業については他のメンバーから頼られることもありました。
最終発表では「発達障がい」に関するカードゲームの作成を提案しました。このカードゲームでは、実際にそのような障がいを持っている人も嫌な思いにならないような工夫を施しました。例えば、誇張したイラストやパーセンテージを表記しました。そうすることで、いい部分も悪い部分も含めてどの部分がその人自身の個性の特徴として表れているのかについてや、発達障がいの範囲は私たちが思っている以上の広範囲であることをゲームの参加者に知ってもらいたいからです。また、特徴を文字で表すのではなく、実際にそのような人たちがいたらどうするという質問を書くことで、かるたとは違って自然な会話が生まれるような仕掛けも作りました。今回のグループメンバーは日本各地から来ていたのでまた一つに集まることは難しいと思いますが、少しでも今回僕たちが考えた「発達障がい」について知ってもらうために何らかの取り組みをしたいとは思っています。
人間は全員平等ではないのでどうしても能力にギャップが生まれます。社会で広く言われている多様性の概念は、均一を目指すものとされてきました。しかし、今回のプログラムで行ったインクルーシブ社会の実現に向けては、個々の能力や個性を最大限に活かし、時には通常の視点では捉えられない可能性を追求することが必要だと再認識できました。また、今回のテーマがインクルーシブ社会であり個性を認め合える社会にするには人の気持ちをよく読みとる必要があるということが分かりました。やっぱり障がいを持つ人を見たときには普通の人とは違うという印象を持ってしまうことはあります。しかし、信頼関係を築くことやその人には何が必要なのかなどを知るとその人の気持ちを理解できると思います。これは、異なる背景や能力を持つ人に対しても同じように言えます。それぞれのバックグラウンドをよく理解しコミュニケーションを積極的に取っていくことが大切になります。これらの行動を通して辛いことを共感したり良好な人間関係を築いたりすることで、自然とインクルーシブ社会につながる可能性が高くなると僕は考えます。
また、自分が研究したいと思える分野はまだ明確にはなっていませんが、これからも自分が楽しいと思える分野を探していこうと思っています。
- 下段右から4番目が水都生